病院や老健で3〜5年ほど経験を積み、一通りの業務を一人で回せるようになったあなた!そろそろ転職を検討していませんか?
ブラック老健に頭までどっぷりと浸かっていた私も、3年目くらいに職場環境とは別の要因で転職を考えたものです。
その要因とは、ズバリ「今後のキャリア」です!普通の職業の方が転職すると「前の職場よりランクが下がる」と言われることが多いのに比べて、リハビリ職の良いところは、やり方次第で今よりも条件の良い職場に入ることができる点でしょう。
そんなリハビリ職の方が今後のキャリアを考える際に悩むポイントとして、「これまでと同じジャンルの職場に転職するか、まったく新しいジャンルに挑戦するか」があると思います。私の場合は、はじめに就業したのが老人保健施設だったので、高齢者リハを突き詰めようと考え、老健と有料老人ホームで悩んだものです。
最終的には両方経験することになったのですが、同じ高齢者系の施設でも、制度から求められるリハビリの内容まで違いがあり、個人的にはとても面白かったです。一応、回復期の病院も経験はしているのですが、やはり高齢者施設がなじみ深いです。
今回の記事では、「3~5年経験者のOTで、老健か有料老人ホームのどちらに就職するか悩んでいる」「求人票を見比べても業務内容が似ていて、実際の違いが見えてこない」と困っている方に向けて、私の経験を交えつつ解説していきます。
同じ「高齢者施設」というくくりでも、老健と有料老人ホームは制度上の位置づけが異なり、働くOTに求められる役割も大きく変わります。
今回は、現場を経験したからこそわかる業務の違いをお伝えします。(※ただし、記事内の情報はあくまでも私が経験した施設なので全ての現場が同じではないことはご理解ください。)
この記事を読むと分かること
- 老健と有料老人ホームの「制度上の違い」と「求められる役割」
- 求人票には絶対に載らない「1日のリアルなタイムスケジュール」
- 現場のリハビリ職が直面する「介護職との視点の違い」と葛藤
- 後悔しないための「専門性」と「じっくり向き合う」キャリアの選び方
結論!OT・PTの転職先として「老健」と「有料老人ホーム」はどちらがおすすめ?

結論から言うと、「老人保健施設と有料老人ホーム、どちらが良くてどちらが悪いということはありません。」
当然のことなのですが、老健、有料老人ホーム共に就職する施設によって働き方は変わりますし、これが絶対という回答はありません。結局、自分が何を重視するかによって選択肢は変わるのです。
あくまでも経験に基づく個人的な意見になりますが、高齢者リハビリの専門性をしっかり伸ばしたい、あるいは他職種と連携して明確な目標に向かいたい方には老健が向いています。
一方、単位数や在宅復帰率といった数値目標のプレッシャーから離れ、入所者の生活に寄り添うペースでじっくり関わりたい場合や、ある程度の裁量を持ってゼロからリハビリの仕組みを作りたい方には有料老人ホームが向いています。
個人的には、最初は老健で経験を積んで知識や技術、接遇、多職種との連携をしっかり学んでおいた方が後に生きてくると感じています。
老健と有料老人ホームの決定的違い!「制度」がリハビリ職の役割を決める
老健は法律上「在宅復帰を目指す施設」と明確に位置づけられており、医師・看護師・リハビリ専門職が常駐します。入所期間もおおむね3〜6ヶ月と短期集中型で、在宅復帰率などの指標で施設の運営自体が評価される仕組みです。
老健では「短期集中リハビリ加算」などの各種加算、そして「在宅復帰率」がリハビリ職に求められるノルマになるため、常に数字と書類に追われるイメージを持っておくと良いでしょう。
一方、有料老人ホームは老人福祉法上「生活の場」であり、老健のような在宅復帰の義務はありません。特に住宅型有料老人ホームは、施設自体に介護保険サービスを提供する義務がなく、入居者が訪問リハビリやデイサービスといった外部サービスと個別に契約する形が一般的です。
このように制度が違えば、日々のスケジュールや求められる視点も当然変わってきます。では、実際に現場ではどのようなスケジュールで動いているのか、次の章で比較してみましょう。
老健(老人保健施設)で働くリハビリ職の1日の流れと現場の現実
在宅復帰率と単位数に追われる老健の実態
前述した通り、老健は「病院と自宅の間の施設」です。施設全体の評価として在宅復帰率が指標となるため、基本的には入所者の生活すべてが「在宅復帰のためのリハビリの場」となります。
新規入所から3ヵ月間は「短期集中リハビリ加算」が取れるため、この期間は特に集中してリハビリを実施する施設が多いです。病院から退院した直後の方も多く、集中的な介入で身体・認知機能の向上が期待できるため、この制度は実に理にかなっています。
そして3ヶ月の期間が過ぎたら、基礎的な機能訓練から「向上した機能をどのように活用して日常生活を送るか」という、自宅環境を見据えたアプローチへと徐々にシフトしていくイメージです。
【タイムスケジュール】老健の1日の流れ
老健はあくまでもリハビリ(1単位20分)が主体の業務になります。食事やおやつ、レクリエーションの見守りや介護は私が勤務していた施設での業務で、これらがなくすべての時間をリハビリに充てる施設もあります。
有料老人ホームで働くリハビリ職の1日の流れと現場の現実
リハビリよりも生活補助(介護)が中心になりやすい実態
私の勤務していた有料老人ホームでは、入居者に対してデイサービスを提供していたので、日中はフロアでの業務が基本となっていました。
リハビリに関しては、施設としてそれほど重要視されていなかったらしく、リハビリに集中していると施設長直々に「利用者の見守りやトイレ介助を手伝うように」と言われることもありました。
また、送迎や入浴介助の経験があるとわかると、日常業務の中にそれらが組み込まれ、リハビリに充てる時間がどんどん減っていったので、業務としては、やはり、生活の補助を重視していたイメージです。
【タイムスケジュール】有料老人ホーム(デイサービス)の1日の流れ
有料老人ホーム(デイサービス)は、あくまでも生活の補助が主な業務でした。リハビリに集中して取り組むのではなく、トイレの介助や入浴介助が主体なのですが、リハビリが必要な利用者もそこそこの数いて、介護業務をこなしながらリハビリを提供するのは結構大変でした。
【体験談】有料老人ホームで痛感した「リハビリと介護」の視点の違い
有料老人ホームでの働き方を象徴する、特殊なケースをひとつご紹介します。
歩行困難な入所者に対して、OTとして身体機能訓練と歩行訓練を実施し、無事に歩行能力を向上させることができたケースがありました。
しかし、施設側からは「歩けるようになると見守りの手間(転倒リスク)が増えるので、リハビリの頻度を少なくしてほしい」という指示が出たのです。
ご家族とご本人からはとても感謝されていたので、専門職としては非常になんとも言えない、もどかしい経験でした。
もちろんこれは極端なケースであり、基本的にはこのような指示が出ることはありません。
しかし、「自立を支援するリハビリ」と「安全と効率を重視する介護」の視点の違いが浮き彫りになる、生活の場ならではのリアルな実態として、参考程度に捉えておいてください。
老健のリハビリが在宅を目指すのに対して、有料老人ホームは、機能を維持して介助量を増やさないことに重点を置いている印象でした。
高齢者リハビリの「専門性」とは?それぞれの施設で得られる学びの違い

老健で得られる専門性とは、在宅復帰という目標に向けて、医師や看護師、他のリハビリ職と密に連携しながら成果を出す経験の積み重ねです。
目標は「在宅復帰」と明確なのですが、これを果たすためには本当に多くの学びが必要になってきます。
老健に就職したばかりの新人PTやOTから「何を勉強すれば良いのか分からない」という悩みをよく聞きますが、正直、その言葉は痛いほど理解できます。
なぜなら、私自身が老健で働き始めた頃、まったく同じ悩みを抱えていたからです。
誤解を恐れずに言ってしまうと、病院でのリハビリはとても分かりやすいのです。脳梗塞であれ、脊髄損傷であれ、骨折であれ、ある程度回復の段階が決まっており、それに対してセオリーに沿ったリハビリを実施していきます。
当然、知識の蓄積や技術の習熟は必要で「簡単」ではありませんが、「やるべきことがハッキリしている」という点では、ある意味で数学の公式を解いていくような印象です。
反面、高齢者リハビリは型にはまりません。自由度が高過ぎるのです。
私の場合は、最初は「身体機能の維持向上が必要」と考えて、関節可動域訓練や筋力訓練を学びました。しかし、現場でリハビリを提供する中で、『認知症』の方の多さに気が付いたのです。
認知症の方へのリハビリで何が問題になるかというと、型にはまった言葉使いでは、相手に正確な指示が伝わらないことです。
指示が伝わらなければ、提供しているリハビリの効果も薄れてしまいます。
そのため、並行して認知症についての知識を深めていく必要がありました。県外の学習会に参加したり、当時流行っていた学習療法の資格を取ったりと、色々なアプローチを試しました。
そうして認知症の方へ適切な声掛けができるようになると、今度は、日常生活を送る上で隠れていた問題が見えるようになり、さらに生活動作や心理学的な面まで学習の幅が広がっていきました。
このように、自由度が高く正解のない環境でもがいた結果、老人保健施設で学ぶべき究極の専門性とは「個人個人の生活を深く理解し、家に帰すこと」なのだと気づきました。
そして、有料老人ホームでの「じっくり向き合う」働き方とは、老健で培ったこの「生活を見る力」をベースに、焦らず利用者の日々の暮らしを支え続けることです。(※ただし、施設によっては介護業務との兼務でむしろ忙しくなるケースもある点には注意が必要です。)
「専門性を磨いて家に帰すための力をつけるか」「培った力で日々の生活にじっくり寄り添うか」。このように切り分けて考えると、ご自身のキャリアの方向性も見えてくるのではないでしょうか。
病院のリハビリが形の決まった「ステーキ弁当」や「ハンバーグ弁当」だとしたら、高齢者リハは、その時々で姿を変える「日替わり弁当」のようなイメージでとらえると良いかもしれません。私は認知症と機能訓練から生活へとつなげていましたが、先輩は呼吸器リハと筋トレから生活に繋げていたり、折り紙や塗り絵、工作から生活動作を獲得している人もいて、本当に自由で面白かったですよ。
まとめ:後悔しない転職へ!あなたの「理想のリハビリ」ができる施設を選ぼう
老健と有料老人ホームは、同じ高齢者施設でも制度上の位置づけからして異なり、そこで働くOTに求められる役割も自然と変わってきます。
どちらの施設が優れているというわけではありません。大切なのは、「今のあなたがキャリアの中で何を伸ばしたいのか」「どんなペースで利用者さんと関わりたいのか」という自分自身の軸を持つことです。
求人票に書かれている「アットホームな職場です」「やりがいのある仕事です」といった表面的な言葉だけでは、今回お伝えしたような現場のリアルな違いは絶対に分かりません。
だからこそ、「今の職場は自分のやりたいリハビリと違う気がする」「単位数に追われる毎日に少し疲れてしまった」と感じているなら、転職エージェントに相談して「他の施設のリアルな内部情報」を聞いてみるのもひとつの手です。
リハビリ職は、やり方や選ぶ環境次第で、自分の理想の働き方を手に入れられる素晴らしい職業です。
この記事が、あなたの後悔のないキャリア選択のきっかけになれば嬉しいです。